
この記事でわかること
- 店舗DXは、道具選びより先に仕事の流れを見直すこと
- 小さなお店がデジタル化を進める6つの順番
- 自分で進める場合と人に頼む場合の比べ方
- 頼んだ方がよい条件と、よくある失敗の防ぎ方
- 費用と補助金を確かめるときの見方
店舗DXは、高いシステムを入れることから始めるものではありません。お店の1日の仕事を書き出し、時間がかかっている作業や取りこぼしが出ている作業から順に、デジタルの道具に置き換えていくことです。予約、会計、顧客の記録、集計といった作業は、つなげ方を決めておかないと、道具を増やすほど手間が増えます。この記事では、小さなお店が店舗DXを進める6つの順番、自分で進める場合と頼む場合の比べ方、頼んだ方がよい条件、つまずきやすい失敗と防ぎ方、費用と補助金の確かめ方を順にまとめます。
店舗DXとは、お店の仕事の流れをデジタルで組み直すこと
DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタルの道具を使って仕事のやり方そのものを変えることを指します。店舗DXは、それをお店の仕事に当てはめたものです。紙の予約台帳をアプリにする、手で書いていた売上表を自動で集計する、といった一つひとつの置き換えは、その入口にあたります。
大きな会社の話に聞こえるかもしれませんが、DXを急いで進めることが求められている点は、規模にかかわらず同じです(出典: IPA 情報処理推進機構「デジタルトランスフォーメーション(DX)」)。小さなお店では、店主やスタッフの時間がそのまま営業の力になるため、1つの作業が短くなるだけでも差が出ます。
| 段階 | やること | 例 |
|---|---|---|
| 置き換える | 紙や手作業をデジタルの道具に変える | 予約台帳をアプリに、手書きの売上表を表計算に |
| つなげる | 道具どうしの記録を1か所にまとめる | 予約と顧客の記録を同じ名簿で見られるようにする |
| 変える | 空いた時間や記録を使って、仕事のやり方を変える | 来店の間隔を見てお知らせを送り、接客に時間を回す |
表の上の段だけで止まると、アプリが増えただけで仕事は楽になりません。真ん中の「つなげる」まで考えておくと、二重入力や転記の手間が減り、下の段の「変える」に進めます。AIを使った仕事の見直し全体の考え方は中小企業のAI業務効率化の始め方にまとめています。
店舗DXを始める前に、今の仕事を書き出す
どの道具を入れるかを考える前に、お店の1日の仕事を書き出してください。道具から選ぶと、困っていない作業のために契約を増やしてしまうことがあります。書き出しておけば、どこから手をつけるかが自然に決まります。

- 開店前、営業中、閉店後に分けて、毎日している作業を書き出す
- 週に1回、月に1回の作業(発注、集計、請求、給与の計算など)も足す
- 作業ごとに、だいたいかかっている時間と、担当している人を書く
- 紙、電話、表計算、アプリなど、今使っている道具を書く
- ミスや取りこぼしが起きたことのある作業に印をつける
書き出してみると、同じ情報を何度も書き写している作業が見つかることがよくあります。予約をノートに書き、来店したら会計の画面に打ち、月末に表計算へ写す、という流れです。こうした転記は、店舗DXでいちばん手をつけやすいところです。
スタッフにも聞いておく
店主が知らないところで、スタッフが工夫して手間をかけている作業があります。書き出すときは、実際に作業している人にも「時間がかかっていること」「やり直しが多いこと」を聞いてください。
店舗DXを進める6つの順番
書き出した仕事をもとに、次の順番で進めると、道具が増えすぎず、途中で止まりにくくなります。全部を一度にやる必要はありません。1段ずつ進めて、使い続けられることを確かめてから次に進んでください。
- 1仕事を書き出す1日と1か月の作業、時間、担当、道具
- 2困りごとに順位をつける時間、ミス、取りこぼしの大きい順
- 3お客さまとの接点を整える営業情報、予約、問い合わせの入口
- 4記録を1か所にまとめる顧客、売上、在庫の置き場所を決める
- 5くり返しの作業を自動にする集計、請求書、お知らせの送信
- 6見直して次へ進む使われているかを確かめ、次の作業へ
道具を選ぶのは4段目からです。先に仕事と困りごとを整理しておくと、選ぶ道具が少なくて済みます。
困りごとに順位をつける
順位は「かかっている時間」「ミスが起きたときの影響」「取りこぼしているお客さま」の3つで考えると決めやすくなります。たとえば、電話の予約を受けられずに逃している、月末の集計に何時間もかかっている、といった作業が上に来ます。
お客さまとの接点から整える
お客さまから見えるところは、効果が分かりやすく、最初に整えると続けやすい部分です。地図や検索に出る営業時間を正しくする、予約や問い合わせをネットでも受けられるようにする、といった作業です。地図に出る情報はGoogleビジネスプロフィールの登録で、予約の受け方は予約システムを自作する方法と選び方で説明しています。
記録を1か所にまとめる
顧客の名簿、売上、在庫がノートやアプリにばらばらにあると、あとで自動にしようとしても材料がそろいません。まずは置き場所を1つ決めます。小さなお店なら、表計算ソフトで始めるのも十分な方法です。作り方は顧客管理をスプレッドシートで始める方法にまとめています。
くり返しの作業を自動にする
記録が1か所にそろえば、毎月同じ形でくり返す作業を自動にできます。売上の集計、請求書の作成、予約の前日のお知らせなどです。表計算の集計はスプレッドシートの自動化、請求書は請求書の自動化の進め方で手順を紹介しています。
店舗DXを自分で進める場合と頼む場合の比べ方
店舗DXは、自分で進めることも、人に頼むこともできます。どちらが良いかはお店によって違います。費用だけでなく、かかる時間と、作ったあとに誰が面倒を見るかまで並べて比べてください。
自分で進める
- 既製のアプリや表計算で始められ、出ていくお金は小さい
- 使いながらすぐ直せる
- 道具選びと設定に自分の時間がかかる
- 道具どうしをつなぐところで止まりやすい
人に頼む
- 仕事の書き出しから相談でき、選ぶ道具が絞れる
- 予約、名簿、集計をつなぐ仕組みまで任せられる
- 費用がかかり、頼む手間もある
- 作ったあとの直し方を決めておく必要がある
自分で進めると出ていくお金は小さく、頼むと時間と仕組みのつなぎ込みを任せられます。
| 比べること | 自分で進める | 頼む |
|---|---|---|
| 出ていくお金 | アプリの利用料が中心 | 作業の量と中身で決まる費用 |
| かかる時間 | 調べる、試す、設定する時間 | 打ち合わせと確認の時間 |
| 道具のつなぎ込み | アプリにある連携の範囲 | お店の流れに合わせて組める |
| 作ったあと | 自分で直し、自分で管理する | 保守を頼むか、引き継ぎを受ける |
既製のアプリ1つで困りごとが片づくなら、自分で進めるのが近道です。一方で、予約と名簿と集計をつなげたい、お店の流れに合う形がアプリにない、という段階では、頼んだ方が早く済むことがあります。日々の作業に生成AIを使う方法はChatGPTの業務活用で、表計算を自動にする仕組みはGoogle Apps Scriptでできることで紹介しています。
店舗DXを人に頼んだ方がよい条件
次の項目に多く当てはまるほど、自分で進めるより頼んだ方が、結果として時間もお金も無駄になりにくくなります。
頼んだ方がよい条件
- 仕事を書き出したものの、どこから手をつけるか決められない
- 同じ情報を、2つ以上のアプリや紙に書き写している
- 既製のアプリを試したが、お店の流れに合わず使われなくなった
- 店主しか分からない作業があり、休めない
- 表計算の関数や自動化の設定を、調べながら作る時間がない
- 作ったあとに不具合が出たとき、相談できる相手がいない
反対に、困りごとが1つにはっきりしていて、それを解決する既製のアプリがある場合は、まず自分で試してみてください。試してみて、どこで止まったかが分かっていれば、頼むときの話も短く済みます。
店舗DXでつまずきやすい失敗と防ぎ方
仕組みづくりの相談を受けていると、道具を入れたあとに止まってしまうお店には共通点があります。どれも始める前に知っていれば防げるものです。
| 失敗 | 起きる理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| アプリが増えて、かえって手間が増える | 困りごとごとに別々のアプリを入れた | 記録の置き場所を先に決め、つながるかを確かめてから選ぶ |
| 入れたのに使われなくなる | スタッフに使い方と理由が伝わっていない | 実際に作業する人と一緒に試し、手順を1枚にまとめる |
| 店主しか操作できない | 設定やログイン情報を1人で持っている | 契約先とログイン情報を一覧にし、2人以上で共有する |
| やめたくても記録を持ち出せない | データの書き出し方を確かめずに契約した | 契約前に、名簿や売上を表計算の形で書き出せるかを確かめる |
| 紙と両方で記録して二重になる | 切り替えの日を決めていない | 紙をやめる日を決め、それまでの記録の移し方を決める |
特に多いのが、最初の失敗です。予約、会計、顧客の名簿をそれぞれ別のアプリで管理し、毎晩3つの画面を見比べているお店は少なくありません。道具を選ぶときは「この記録は最後にどこに集まるか」を先に決めてください。
お客さまの情報の扱いに気をつける
名簿や予約の記録には、お客さまの名前や連絡先が入ります。誰が見られるか、スマホをなくしたときにどうするかを決めてから、デジタルに移してください。
デジタル化にかかる費用と補助金の確かめ方
費用は、何を置き換えて、どこまでつなげるかで決まります。既製のアプリを使うなら月々の利用料が中心になり、お店の流れに合わせた仕組みを作るなら作業の量に応じた費用がかかります。仕組みを作る場合の費用の決まり方はWebアプリの開発費用で詳しく説明しています。
- 毎月かかるお金: アプリの利用料、決済の手数料、通信費
- 最初にかかるお金: 機器の購入、設定、仕組みづくり
- 見落としやすいお金: スタッフが慣れるまでの時間、紙と並行する期間の手間
国の補助金を使える場合もあります。ITツールの導入を支える制度は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)として案内されています(出典: 中小企業庁・中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金」公式サイト)。対象になる道具、補助の割合、申請の時期は回ごとに変わるため、具体的な条件は公式サイトで確認してください。ホームページの補助金については小規模事業者持続化補助金でホームページを作る条件にまとめています。
請求書や領収書をデジタルでやり取りする場合は、データの保存の決まりもあります。電子帳簿保存法の取り扱いは、国税庁の「電子帳簿保存法関係」のページで確認してください(出典: 国税庁「電子帳簿保存法関係」)。
お客さまとの接点として、営業時間や予約の入口をまとめたホームページを持つ場合の費用はホームページ制作の費用相場で説明しています。uparia では、制作費0円・月額2,980円から(最低契約期間12か月)のホームページの月額プランがあり、24か月続ければサイトとドメインはお客様のものになります。料金の詳しい決まりは料金ページにまとめています。
今週から始められる店舗DXの最初の一歩
自分で進めるにしても頼むにしても、最初にやることは同じです。次の3つを済ませておけば、どちらに進んでも無駄になりません。

どちらに進む場合も役に立つ準備
- 1日と1か月の仕事を書き出し、かかっている時間を書く
- 時間、ミス、取りこぼしの大きい作業を3つ選ぶ
- 今使っているアプリと契約先、ログイン情報を一覧にする
この3つがそろえば、自分で進める場合は最初に置き換える作業が決まり、頼む場合は打ち合わせが短く済みます。小さなお店で取り入れやすい使い方はAI業務効率化の事例でも紹介しています。
uparia では、仕事の書き出しから、予約や名簿、集計をつなぐ仕組みづくりまでを相談できます。何から手をつけるか決まっていない段階でも、小さな会社向けのAI導入支援と業務自動化の資料で、頼める範囲と進め方を確かめられます。
よくある質問
店舗DXとデジタル化は何が違うのですか?
デジタル化は、紙や手作業をアプリや表計算に置き換えることです。店舗DXは、その置き換えを入口にして、記録をつなげ、空いた時間や集まった記録を使ってお店の仕事のやり方まで変えていくことを指します。小さなお店では、まずデジタル化から始めて構いません。
パソコンが苦手でも店舗DXは進められますか?
進められます。最初はスマホで使える予約アプリや、地図に出る営業情報の見直しなど、操作の少ないところから始めてください。仕事を書き出して困りごとに順位をつける作業は、紙とペンでできます。設定でつまずいたら、その部分だけを人に頼む方法もあります。
スタッフが新しい道具を使ってくれません。どうすればよいですか?
使う理由と、楽になる場面が伝わっていないことが多いです。実際に作業する人と一緒に試し、手順を1枚の紙にまとめて店に置いてください。紙と並行する期間を決め、その後は紙をやめる日を決めておくと、二重の記録が続くのを防げます。
店舗DXにAIはどこまで使えますか?
お知らせ文やメニューの説明文の下書き、問い合わせへの返信の案、集計結果の読み取りなど、文章と整理の作業で使いやすくなっています。一方で、料金や営業時間などの事実の確認、お客さまの情報の扱いは人が責任を持つ必要があります。AIの出した文は確かめてから使ってください。
飲食店と美容室で、店舗DXの進め方は変わりますか?
順番の考え方は同じです。違うのは、困りごとの上位に来る作業です。席の予約や仕込みの量が課題になるお店もあれば、指名の予約や来店の間隔の管理が課題になるお店もあります。業種で決めつけず、自分のお店の仕事を書き出したものから順位をつけてください。






