
この記事でわかること
- 小さな会社で真似しやすいAI業務効率化の事例10例
- AIに任せやすい業務と、任せにくい業務の見分け方
- 個人情報や著作権など、使う前に気をつけるつまずき
- 自分で進める場合と人に頼む場合の比べ方と判断基準
- 自社で最初に試す業務を1つ選ぶ手順
AI業務効率化の事例を見ていくと、小さな会社で成果につながりやすいのは、文章の下書きと、情報の転記や整理です。返信文や書類のたたき台をAIに作らせて人が確かめる、届いた申込みを表に移す、といった毎日くり返す作業から始めると、無理なく続きます。反対に、判断を丸ごと任せる使い方や、確かめる人がいない使い方はつまずきやすくなります。この記事では、問い合わせ対応、書類と事務、集客と発信の3つの場面に分けて10の使い方を紹介し、よくあるつまずき、自分で進める場合と頼む場合の判断基準、最初の1つの選び方までを順にまとめます。
AI業務効率化の事例を見る前に、AIに向く業務の形
事例をそのまま真似しても、自社の業務の形が違えばうまくいきません。先に、AIに任せやすい業務の共通点を知っておくと、どの使い方が自分に合うかを選びやすくなります。
- 毎日か毎週くり返している同じ形の作業が何度も出てくる
- 材料が文字になっているメール、メモ、表など、AIに渡せる形がある
- 仕上がりを人が確かめられる間違いに気づける人が社内にいる
- 間違えても取り返しがつく送る前、出す前に直せる段階で使う
当てはまる項目が多い業務ほど、AIに下書きや整理を任せやすくなります。
生成AI(文章や画像を作るAI)が得意なのは、材料をもとに文章を作る、長い文章を短くまとめる、ばらばらの情報を決まった形に整える、の3つです。苦手なのは、事実を正しく覚えていること、自社だけの事情を知っていること、最後の判断に責任を持つことです。
| 分け方 | 例 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 任せやすい | 返信文の下書き、要約、表への転記、文章の言い換え | AIに作らせて、人が確かめて使う |
| 気をつけて任せる | 料金や日程が入る文章、お客さまの情報を扱う作業 | 事実は人が入れ直し、入力してよい情報を決めておく |
| 任せにくい | 値引きの判断、契約の可否、医療や法律の判断 | AIは材料の整理までにして、判断は人がする |
AI業務効率化を何から始めるかという全体の順番は、中小企業のAI業務効率化の始め方で詳しく説明しています。この記事では、その中でも小さな会社が真似しやすい具体的な使い方に絞って紹介します。
問い合わせとお客さま対応のAI業務効率化の事例
お客さまとのやり取りは、同じ質問が何度も届くわりに、1件ごとに文章を考える手間がかかる業務です。AIには下書きを任せ、送るかどうかは人が決める形にすると、間違いを防ぎながら手間を減らせます。

事例1 よくある質問への返信の下書きを作る
メールやLINEで届く「料金はいくらか」「駐車場はあるか」「キャンセルはいつまでか」といった質問に、毎回一から返信を書いている会社は少なくありません。過去の返信や料金表を1つの文書にまとめておき、それを材料にAIに返信の下書きを作らせると、書く時間を短くできます。
このとき大切なのは、材料の文書を新しく保つことです。料金や営業時間が変わったのに文書が古いままだと、AIは古い情報で下書きを作ります。送る前に、数字と日程だけは必ず人の目で確かめる決まりにしてください。
事例2 電話や打ち合わせのメモを要点にまとめる
電話や打ち合わせの後に、走り書きのメモを清書する作業もAIに向いています。メモを貼り付けて「お客さまの要望」「決まったこと」「次にやること」に分けてまとめさせると、社内で共有しやすい形になります。録音を文字にする機能を使う場合は、相手に録音してよいかを先に伝えておきます。
事例3 口コミへの返信文の案を出す
Googleマップなどの口コミに返信したいけれど、言葉が思いつかずに放置している、という相談はよくあります。口コミの内容と、伝えたいこと(お礼、改善したこと、また来てほしいこと)を渡して案を3つほど出させ、自分の言葉に近いものを選んで直すと、返信を続けやすくなります。厳しい口コミへの返信は、感情的な表現になっていないかを特に丁寧に確かめてください。
書類と事務作業のAI業務効率化の事例
事務作業では、AIに文章を作らせる使い方に加えて、情報を決まった形に整える使い方が役に立ちます。ここでは、AIと表計算や簡単な仕組みを組み合わせた例も含めて紹介します。
事例4 見積書や請求書の明細を整える
現場で書いた手書きのメモや、メールに書かれた注文の内容から、見積書や請求書の明細を作る作業です。メモの文字をAIに読ませて「品名」「数量」「単価」の表に整えさせれば、あとは書類のひな形に移すだけになります。金額の計算はAIに任せず、表計算ソフトの計算式で行う方が安全です。書類づくりの流れ全体を仕組みにする方法は、請求書の自動化で詳しく説明しています。
事例5 届いた申込みやメールを表に転記する
問い合わせフォームやメールで届いた申込みを、顧客の一覧表に手で書き写している会社は多くあります。届いた文章から名前、連絡先、希望の内容を取り出して表の決まった列に入れる作業は、AIと表計算を組み合わせると手作業を減らせます。Googleのスプレッドシートなら、Google Apps Script(GAS。Googleのサービスを動かす小さなプログラム)で、フォームの送信と同時に表へ書き込むこともできます。
表の作業を減らす考え方はスプレッドシートの自動化に、GASで何ができるかはGoogle Apps Scriptでできることに、顧客の一覧の作り方は顧客管理のスプレッドシートにまとめています。
事例6 社内の手順書やマニュアルの下書きを作る
「開店前にやること」「新しいスタッフに教えること」など、頭の中にしかない手順を文章にする作業です。話し言葉で順番に説明したメモをAIに渡し、番号付きの手順に整えさせると、たたき台が早くできます。実際にその手順で作業してみて、抜けている段を足していくと、使える手順書になります。
事例7 会議のメモや日報を短くまとめる
長い会議のメモや、スタッフの日報を読む時間を減らす使い方です。「決まったこと」「困っていること」「誰が何をするか」の3つに分けて要約させると、読む側の負担が減ります。要約では細かい条件が抜けることがあるので、お金や約束に関わる部分は元の文章で確かめてください。
| 事例 | AIに任せる部分 | 人が受け持つ部分 |
|---|---|---|
| 見積書や請求書の明細 | メモを品名と数量の表に整える | 金額の計算と最終確認 |
| 申込みの転記 | 文章から名前や希望を取り出す | 表の列の決め方と、抜けの確認 |
| 手順書の下書き | 話した手順を番号付きの文章にする | 実際に作業して足りない段を足す |
| 会議メモや日報 | 決まったことと課題に分けて短くする | お金や約束に関わる部分の確認 |
集客と情報発信のAI業務効率化の事例
お知らせやSNSの投稿、ホームページの文章は、書く時間が取れずに止まりやすい仕事です。AIに案を出させて、自分の言葉に直して出す形にすると、発信を続けやすくなります。

事例8 お知らせやSNS投稿の案を作る
新しいメニュー、休業日、イベントなどのお知らせを、ホームページ用、Instagram用、LINE用と書き分ける作業です。伝えたい事実を箇条書きで渡し、媒体ごとの長さで案を作らせると、書き分けの手間が減ります。日付や価格はAIが言い換えたときに変わることがあるので、出す前に元のメモと見比べてください。
事例9 ホームページの文章を見直す
今あるホームページの文章をAIに読ませて、分かりにくい言葉や、初めての人に足りない説明を指摘させる使い方です。直す案も出せますが、そのまま差し替えるより、指摘を参考に自分で書き直す方が、店や会社らしさが残ります。ホームページづくりそのものにAIをどこまで使えるかは、AIでのホームページ作成で詳しく説明しています。
事例10 商品説明やチラシの文案を作る
商品の特徴や使い方のメモから、商品説明やチラシの文案を作らせる使い方です。案を複数出させて言い回しを比べると、自分では思いつかない表現が見つかることがあります。ただし、AIは大げさな表現を書くことがあります。医療や健康、美容に関わる商品やサービスは広告の決まりがあるので、効果を言い切る表現になっていないかを必ず人が確かめてください。
発信の事実は人が持つ
AIに任せられるのは、言い回しと文章の形までです。価格、日程、在庫、できることとできないことといった事実は、人が用意して、人が最後に確かめます。この線を守ると、発信の数を増やしても間違いを広げずに済みます。
AI業務効率化の事例で多いつまずきと防ぎ方
事例を真似して始めたものの、途中で使わなくなるケースには共通点があります。制作や仕組みづくりの相談を受ける側から見て、よく出てくるつまずきを並べると次のとおりです。
| つまずき | 起きる理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| もっともらしい間違いがそのまま出る | AIは事実を確かめずに文章を作ることがある | 数字、日程、固有名詞は人が元の資料と見比べる |
| 担当者しか使い方を知らない | 使い方がその人の頭の中にしかない | AIへの頼み方(指示の文章)を社内で共有して保存する |
| 入れてはいけない情報を入れてしまう | 入力してよい範囲を決めていない | お客さまの情報を入れるかどうかを先に決める |
| 結局、手作業と二重になる | AIの出力を別の表に写し直している | 出力の形を、次に使う表や書類の形に合わせる |
| 使う場面が広がりすぎる | あれもこれもと一度に始めた | 1つの業務で続けられる形にしてから次へ広げる |
お客さまの情報をAIに入れる前に確かめること
個人情報保護委員会は、事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合、利用目的の範囲内かを十分に確かめること、入力した情報がAIの学習などに使われないかを確かめることを注意として示しています(出典: 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。使っているAIサービスの設定や利用規約で、入力した内容がどう扱われるかを確かめてから使ってください(各サービスの公式サイトで確認)。
AIで作った文章や画像と著作権
AIで作った文章や画像の扱いについて、文化庁は考え方を整理した資料を公開しています(出典: 文化庁「AIと著作権について」)。他社の文章や画像を材料にして似たものを作らせる使い方は避け、チラシやホームページに出すものは、既にある作品と似すぎていないかを確かめてから使うと安心です。
使い始める前に決めておくこと
- AIに入力してよい情報と、入力しない情報
- AIの出力を最後に確かめる人
- 数字や日程など、必ず元の資料と見比べる項目
- AIへの頼み方を保存しておく場所
自分で進める場合と人に頼む場合の比べ方
ここまでの事例の多くは、AIのサービスに申し込めば自分たちで始められます。一方で、表やフォームとつなぐ仕組みづくりは、人に頼んだ方が早く形になることもあります。どちらにも良いところがあるので、並べて比べてみてください。
自分で進める
- AIサービスの利用料だけで始められる
- 思いついたときにすぐ試せる
- 使い方の工夫が社内に残る
- 仕組みづくりと不具合の対応も自分たち
人に頼む
- 業務の整理から一緒に進められる
- 表やフォームとつなぐ仕組みまで作れる
- 作業の費用と打ち合わせの時間がかかる
- 直したいときは頼む手間がかかる
下書きや要約は自分で始めやすく、表やフォームとつなぐ仕組みは頼むと早く形になります。
| 比べること | 自分で進める | 人に頼む |
|---|---|---|
| 向いている使い方 | 返信の下書き、要約、投稿の案など1人で完結する作業 | フォーム、表、メールをつなぐ作業や、複数の人が使う仕組み |
| 出ていくお金 | AIサービスの利用料が中心 | 仕組みづくりの費用がかかる。金額は作業の量と中身で決まる |
| かかる時間 | 試しながら覚える時間がかかる | 業務の説明と確認の時間で済む |
| 公開後の手入れ | サービスの仕様が変わったら自分で直す | 保守まで頼めば任せられる |
まずは自分でAIのサービスを使い、下書きや要約を試してみるのが近道です。ChatGPTなどを仕事でどう使い始めるかはChatGPTの業務での活用にまとめています。試すうちに「この作業を毎回コピーして貼り付けるのが手間だ」と感じたら、そこが仕組みにする候補です。
人に頼んだ方がよい条件と費用の考え方
AIを使うこと自体は自分で始められても、次のような条件に当てはまる場合は、人に頼んだ方が早く、無理なく続けられます。
人に頼んだ方がよい条件
- フォーム、メール、表など、複数の道具をつなげたい
- スタッフ全員が同じ手順で使える形にしたい
- お客さまの情報を扱うので、入力の範囲や保存先を整理したい
- 試す時間が取れず、何から手を付けるかも決まっていない
- 作った仕組みが止まったときに直せる人が社内にいない
費用は、つなぐ道具の数、使う人の数、扱う情報の種類で変わります。ホームページの問い合わせフォームから表への転記まで一緒に考える場合は、ホームページ制作の費用相場で、ページや機能ごとに費用が決まる仕組みを確かめておくと、見積もりを比べやすくなります。予約の受付や社内の管理画面のように、小さな業務アプリを作る場合の費用の決まり方はWebアプリの開発費用で説明しています。
予約の受付から改善したいお店は予約システムの導入、お店の業務全体をデジタルに移していきたい場合は店舗のDXの進め方も判断の材料になります。
自社で最初に試す業務を1つ選ぶ手順
事例を読んで「うちでもできそうだ」と感じたら、いきなり全部を変えようとせず、1つの業務で試すところから始めます。次の順番で進めると、途中で止まりにくくなります。

- 1週間の作業を書き出し、くり返している作業に印を付ける
- 印を付けた作業のうち、材料が文字になっていて、間違えても直せるものを選ぶ
- 選んだ作業を、AIに任せる部分と人が確かめる部分に分ける
- 2〜3週間ほど実際に使い、AIへの頼み方を書き残す
- 続けられたら、表やフォームとつなぐかどうかを考える
最初の1つは、効果が大きそうな業務より、毎日くり返していて失敗しても困らない業務を選ぶのがおすすめです。小さく続けられた経験があると、次にどの業務を仕組みにするかを社内で話し合いやすくなります。
uparia では、どの業務をAIに任せるかの整理から、フォームや表とつなぐ仕組みづくりまでをお手伝いしています。内容はAI導入と業務の自動化のサービスにまとめています。料金と進め方は資料請求から手元でご確認いただけます。
よくある質問
AIを業務に使うのに、有料のサービスは必要ですか?
無料で使えるAIサービスもあり、下書きや要約を試すだけなら無料の範囲で始められることがあります。ただし、入力した内容の扱い、使える回数、会社で使うときの条件はサービスやプランによって違います。お客さまの情報を扱う場合は、各サービスの公式サイトで利用規約と設定を確かめてから決めてください。
パソコンが苦手なスタッフでもAIを使えますか?
文章を入力して答えを読むだけなら、メールを書ける人なら使い始められます。つまずきやすいのは、何をどう頼めばよいかです。よく使う頼み方を文章のひな形にして共有しておくと、慣れていない人でも同じ使い方ができます。
AIが作った文章をそのままお客さまに送ってもよいですか?
そのまま送るのは避けてください。AIは料金や日程などを間違えたまま、もっともらしい文章を作ることがあります。送る前に、数字と日程、固有名詞を人が元の資料と見比べ、言い回しも自社らしいかを確かめてから送る決まりにすると安心です。
社員が数人の会社でもAIを入れる意味はありますか?
人数が少ない会社ほど、1人が受け持つ仕事の種類が多く、返信や書類づくりの下書きを減らせると助かる場面があります。大きな仕組みを入れる必要はなく、1人が毎日くり返している作業を1つ選んで試すところから始められます。
AIを業務に使うとき、社内の決まりは必要ですか?
最初から細かい規程を作る必要はありませんが、入力してよい情報、出力を確かめる人、使ってよいサービスの3つは決めておくと安心です。使う人や場面が増えてきたら、使い方の例と一緒に決まりを書き足していくと、無理なく整えられます。






