
この記事でわかること
- ChatGPTの業務活用に向いている仕事と向かない仕事
- 仕事で使い始めるときの5つの手順と指示文の書き方
- 仕事別にみた生成AIの使い方の例
- 社内導入で先に決めておく7つのルール
- 入力してはいけない情報と、出力を確かめる手順
ChatGPTの業務活用は、文章の下書き、メールの返信案、資料の要約、アイデア出しのように、人が最後に確かめられる仕事から始めるのが進めやすい方法です。反対に、お客様の個人情報を入れる使い方や、答えを確かめずに外へ出す使い方は、先に社内で決めごとを作ってからにします。この記事では、向いている仕事と向かない仕事、使い始める5つの手順、指示文の書き方、社内導入で決める7つのルール、入力してはいけない情報と出力の確かめ方を、小さな会社やお店の目線で順に説明します。
ChatGPTの業務活用でできること、向いている仕事と向かない仕事
ChatGPTは、OpenAIが提供している対話型の生成AI(文章などを新しく作り出すAI)です。指示した内容に沿って文章を書く、長い文章をまとめる、言い回しを変える、といった作業が得意です。

一方で、ChatGPTはもっともらしい間違いを書くことがあります。会社の中の事情や、お客様とのこれまでのやりとりも、教えない限り知りません。そのため、仕事で使うときは「下書きを作らせて、人が確かめて仕上げる」という分担が基本になります。
| 仕事 | 向いている使い方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| メール・案内文 | 返信の下書き、言い回しの調整、敬語の確認 | 宛名、金額、日時は人が入れ直す |
| 議事録・メモ | 箇条書きのメモを文章に整える、長い記録の要約 | 人の名前や取引先名を入れてよいかは社内のルールに従う |
| ホームページ・SNSの文章 | 見出しの案、紹介文のたたき台 | 事実と違う内容や大げさな表現がないかを確かめる |
| 表やデータの作業 | 関数の書き方を聞く、表の項目を考える | 計算の結果は表計算ソフトで確かめる |
| アイデア出し | キャンペーン名、アンケートの質問の候補 | 候補として出させ、選ぶのは人が行う |
| 調べもの | 用語の説明、考える観点の洗い出し | 大事な事実は公式の情報で確かめ直す |
ChatGPTに向かない仕事
- 税金、法律、医療など、間違えると損害につながる判断そのもの
- 制度の改正、料金、営業日など、変わったばかりの情報が必要な調べもの
- お客様の名簿や問い合わせの内容など、個人情報をまとめて扱う作業
- 毎回同じ手順を同じ順番でくり返す作業
最後の「毎回同じ手順のくり返し」は、ChatGPTに毎回頼むより、表計算ソフトの関数やプログラムで仕組みにした方が、手間も間違いも減らせることが多い作業です。方法はスプレッドシートの自動化の方法で説明しています。AIをどの仕事から使うかの全体の順番は、中小企業のAI業務効率化の進め方にまとめています。
ChatGPTを業務に活用する始め方、5つの手順
いきなり全員で使い始めると、何に使ってよいのか、何を入れてはいけないのかがばらばらになります。まずは1人か2人で、1つの仕事に絞って試すところから始めます。
- 1仕事を1つ選ぶ手間がかかっていて、人が確かめられる仕事を選ぶ
- 2入れてよい情報を決める個人情報や社外秘を入れない範囲を決める
- 3指示文を作って試す同じ仕事で何度か試し、指示の書き方を整える
- 4人が確かめて使う出力をそのまま使わず、確かめる人と項目を決める
- 5残して広げるうまくいった指示文を残し、ほかの人や仕事に広げる
仕事を1つに絞り、入れてよい情報を先に決めてから試します。確かめる人を置き、うまくいった使い方を残してから広げます。
手順1: 手間がかかっていて、確かめられる仕事を選ぶ
選ぶのは、毎週のように発生していて、文章を書くのに時間がかかっている仕事です。たとえば、問い合わせへの返信、お知らせの文章、打ち合わせのメモの清書などです。出来上がったものを読めば正しいかどうかが分かる仕事にすると、間違いに気づけます。
手順2: 入れてよい情報と入れない情報を決める
試す前に、お客様の名前や連絡先、取引先との契約の中身などを入れないことを決めます。名前は「Aさん」、会社名は「取引先」のように置き換えて入れる、と決めておくと、試す人が迷いません。詳しくは後の「入力してはいけない情報」で説明します。
手順3: 指示文を作って、同じ仕事で何度か試す
1回目の出力で判断せず、同じ仕事で指示の書き方を変えながら何度か試します。足りない条件を足していくと、使える下書きが出るようになります。書き方の型は次の見出しで紹介します。
手順4: 確かめる人と確かめる項目を決める
外に出す文章は、作った人とは別の人が読むか、作った人がチェックの項目に沿って読み直してから使います。金額、日時、固有名詞、約束ごとの4つは、とくに間違いが混ざりやすいところです。
手順5: うまくいった使い方を残して広げる
使える出力が出た指示文は、共有のメモや表に残します。どの仕事で、どんな指示を出し、どこを人が直したかを書いておくと、次に使う人が同じところでつまずきません。
アカウントとプランの選び方
ChatGPTには、個人で使う無料と有料のプランと、会社で使う法人向けのプランがあります。プランの名前や料金、使える機能、データの扱いは変わることがあるので、OpenAIの公式の料金ページで確認してください(出典: OpenAI「ChatGPT の料金プラン」)。試す段階では個人のアカウントで始め、社内で広げる段階で法人向けのプランを検討する、という順番で考える会社が多いです。
業務で使える指示文の書き方、5つの要素で伝える
ChatGPTへの指示文(プロンプト)は、人に仕事を頼むときと同じで、前提が多いほど思った通りの出力に近づきます。次の5つの要素を入れると、出力が安定しやすくなります。
| 要素 | 書くこと |
|---|---|
| 役割 | 誰として書くか(例: 美容室の受付担当として) |
| 目的 | 何のための文章か、読む人は誰か |
| 材料 | 伝えたい事実、元になるメモ、守りたい言い回し |
| 条件 | 文字数、敬語の度合い、使わない言葉 |
| 形 | 箇条書きか文章か、案をいくつ出すか |
たとえば、問い合わせの返信なら「あなたは料理教室の受付担当です。体験レッスンの空きを聞かれたお客様への返信を書いてください。材料は次のとおりです。空いているのは平日の午前の枠で、持ち物はエプロンです。300字以内、やわらかい敬語で、案を2つ出してください」のように書きます。役割、目的、材料、条件、形がそろっているので、直す手間が少ない下書きになります。
思った出力にならないときの直し方
- 長すぎる、短すぎる: 文字数や段落の数を数字で指定する
- 堅すぎる、軽すぎる: 「お客様に送るメール」「社内向けのメモ」など、読む人を書き足す
- 事実と違うことが混ざる: 「材料にないことは書かない」と条件に足す
- ありきたりな内容になる: 自分のお店や会社ならではの事実を材料に足す
- 1回で直らない: 出力に対して「2つ目の案の書き出しを短く」のように、続けて直しを頼む
よく使う指示文は社内で型にして共有する
毎回ゼロから指示を書くと、人によって出力の質がばらつきます。よく使う指示文は、材料を入れる場所を空けた型にして、共有のメモに置いておきます。型を使う人は材料の部分だけを差し替えればよいので、慣れていない人でも同じ水準の下書きが作れます。
仕事別にみる生成AIの業務活用の例
ここでは、小さな会社やお店で試しやすい使い方を、仕事の種類ごとに紹介します。どれも、ChatGPTに下書きを作らせ、人が確かめて使う前提です。

お店やサロンでの使い方
- 臨時休業や新しいメニューのお知らせの文章
- SNSの投稿文の案を複数出させて、選んで直す
- 口コミへの返信の下書き(お客様の名前は入れない)
- スタッフ向けの接客マニュアルの言い回しを整える
教室や士業、工務店など、説明の多い仕事での使い方
- よくある質問への答えのたたき台を作る
- 専門用語の多い説明を、初めての人向けの言葉に言い換える
- 打ち合わせのメモから、確認事項の一覧を作る
- 見学や相談の前に送る案内文を整える
事務や経理での使い方
- 表計算ソフトの関数の書き方を聞く
- 社内向けの手順書の文章を整える
- 取引先へのお願いや催促のメールの言い回しを考える
請求書の作成や送付のように、毎月同じ流れをくり返す事務は、ChatGPTで文章を作るより、仕組みにして手作業を減らす方が向いています。進め方は請求書の自動化の方法で説明しています。ほかの会社がどんな仕事にAIを使っているかはAI業務効率化の事例を、ホームページに載せる文章を作るときの注意はホームページの文章の書き方を合わせて読んでください。
ChatGPTの社内導入で先に決める7つのルール
1人で試していたときはうまくいっていても、社内で使う人が増えると、入れてはいけない情報を入れる、確かめずに外に出す、といったことが起きやすくなります。広げる前に、次の7つを決めて1枚の紙にまとめます。
- 使ってよい仕事と、使わない仕事
- 入力してよい情報と、入力してはいけない情報
- 使うアカウントとプラン(会社のアカウントか、個人のアカウントか)
- 出力を外に出す前に確かめる人と項目
- 画像や文章を外に出すときの著作権の確認
- 困ったときや、間違いに気づいたときの相談先
- ルールを見直す時期と担当者
ルールは禁止ばかりにしない
禁止事項だけを並べると、使ってよいのかが分からず、誰も使わなくなります。「メールの下書きと議事録の清書には使ってよい」のように、使ってよい仕事を先に書くと、試す人が増えます。入力してはいけない情報は、具体的な例を添えて書くと迷いが減ります。
個人のアカウントで使われていないかを確かめる
会社として決める前から、社員が自分のアカウントで仕事に使っていることがあります。叱るより先に、どの仕事に使っているかを聞いてみると、効果のありそうな使い方と、危ない使い方の両方が見えてきます。そのうえで、会社として使うアカウントと、入れてよい情報を決めます。
国の指針も参考にする
経済産業省と総務省がまとめた「AI事業者ガイドライン」には、AIを使う側の事業者(AI利用者)に向けた留意点も書かれています(出典: 経済産業省「AI事業者ガイドライン」)。小さな会社がすべてを取り入れる必要はありませんが、社内ルールに抜けがないかを見直すときの手がかりになります。
社内ルールを配る前に確かめること
- 使ってよい仕事が、具体的な例で書かれているか
- 入力してはいけない情報に、自社の例が挙がっているか
- 外に出す前に確かめる人が決まっているか
- パートやアルバイトにも分かる言葉で書かれているか
- 相談先と、見直す時期が書かれているか
ChatGPTに入力してはいけない情報と、データの扱いの確かめ方
仕事で使うときにいちばん気をつけたいのが、入力する情報です。入力した内容がどう扱われるかは、使っているプランや設定によって変わります。まず、入れない情報を決めておきます。
| 情報の種類 | 例 | どうするか |
|---|---|---|
| お客様の個人情報 | 名前、住所、電話番号、メールアドレス、相談の中身 | 入れない。必要なら「Aさん」などに置き換える |
| 社員の個人情報 | 給与、評価、健康のこと | 入れない |
| 取引先との約束 | 契約の条件、見積もりの金額、秘密保持の対象 | 入れない。言い回しだけを相談するなら中身を伏せる |
| 会社の秘密 | 新しい商品の計画、まだ出していない価格 | 入れない |
| ログインの情報 | パスワード、管理画面の URL と ID | どんな場合も入れない |
個人情報を入れる場合の注意
個人情報保護委員会は、事業者が生成AIサービスに個人データを含む指示文を入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲かを十分に確かめるよう注意を呼びかけています。本人の同意なく入力した個人データが、応答を作る以外の目的で扱われると、法律に反するおそれがあるともしています(出典: 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」)。
入力したデータが学習に使われるかを確かめる
OpenAIは、法人向けのプランやAPI(ほかのシステムからChatGPTの機能を呼び出す仕組み)で扱うデータを、初期設定ではモデルの学習に使わないと説明しています(出典: OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」)。個人向けのプランでは、設定の「データコントロール」で、会話をモデルの改善に使うかどうかを選べます(出典: OpenAI ヘルプセンター「Data Controls FAQ」)。項目の名前や扱いは変わることがあるので、使い始める前に公式の説明で確かめてください。
学習に使われない設定にしても、入力した情報が外部のサービスに送られることには変わりません。設定に頼るより、入れない情報を決めておく方が先です。
出力の間違いと著作権に気をつける、使う前の確かめ方
ChatGPTの出力は、正しそうに見えても間違っていることがあります。とくに、数字、日時、人や会社の名前、法律や制度の説明は、もっともらしい形で間違いが混ざります。外に出す前に、次の項目を確かめます。
- 数字と日時金額、日数、時間が、材料と同じになっているか
- 名前人、会社、商品の名前が正しいか
- 約束ごとできないことを約束する書き方になっていないか
- 制度や法律の説明公式の情報で確かめ直したか
- ほかの文章との似かた特定の文章や画像とそっくりになっていないか
材料として渡した事実と食い違っていないかを、上から順に確かめます。直したところは、次の指示文に条件として足します。
生成AIで作ったものと著作権
文化庁は、AIで作った文章や画像を使う場合も、既存の著作物と似ていて(類似性)、それを元にしている(依拠性)と認められれば、著作権の侵害になりうると説明しています(出典: 文化庁「AIと著作権について」)。特定の作家や他社の文章を指定して「同じように書いて」と頼む使い方は避け、出力が既存の文章とそっくりになっていないかを確かめてから使います。
ホームページやチラシに載せるときの注意
ホームページやチラシのように、多くの人の目に触れるものに使う文章は、とくに念入りに確かめます。「必ず」「いちばん」のような言い切りや、根拠のない効果の表現が混ざっていないかも見てください。業種によっては広告の表現に決まりがあるので、その決まりに沿っているかを人が判断します。
ChatGPTの業務活用だけで足りないとき、ほかの仕組みとつなぐ目安
ChatGPTを使い慣れてくると、「毎回コピーして貼り付けるのが手間」「同じ指示を毎日出している」と感じる場面が出てきます。そうなったら、ChatGPTを単独で使うのではなく、ほかの仕組みとつなぐことを考える時期です。

| 困りごと | 合いそうな方法 |
|---|---|
| 同じ指示文を毎日コピーして使っている | 指示文の型を共有し、使う人と場面を決める |
| 表のデータを1行ずつChatGPTに貼っている | スプレッドシートとプログラムをつなぎ、まとめて処理する |
| 問い合わせの返信案を毎回作っている | 問い合わせフォームと返信の下書きづくりをつなぐ |
| お店の予約や会計、在庫の記録がばらばら | AIより先に、記録の置き場所をそろえる |
Googleのスプレッドシートとつなぐ場合は、Google Apps Script(Googleのサービスを動かすためのプログラム)を使う方法がよく選ばれます。できることはGoogle Apps Scriptでできることにまとめています。お店の予約や会計、在庫の記録をデジタルにそろえるところから考えたい場合は、店舗DXの進め方が参考になります。
つなぐ作業は、社内に詳しい人がいれば自分たちで進められます。プログラムを書ける人がいない、作った仕組みを直せる人がいなくなるのが心配、という場合は、AI導入支援のように、仕組みづくりと使い方の整理をまとめて頼める先に相談する方法もあります。
ChatGPTの業務活用を社内で続けるために最初にやること
最後に、この記事の内容を、明日から動ける順番にまとめます。
- 文章を書くのに時間がかかっている仕事を1つ選ぶ
- 入力してはいけない情報を、自社の例を挙げて書き出す
- 役割、目的、材料、条件、形の5つをそろえた指示文で試す
- 外に出す前に確かめる人と項目を決める
- うまくいった指示文を残し、7つのルールを1枚にまとめてから社内に広げる
ChatGPTは、任せる仕事と確かめる人を決めて使えば、文章を書く時間を減らす手伝いになります。使ううちに、同じ作業のくり返しが見えてきたら、ほかの仕組みとつなぐ時期です。
uparia では、小さな会社やお店の手作業を洗い出し、ChatGPTなどの生成AIやスプレッドシートを使った仕組みづくりをお手伝いしています。社内ルールの作り方や、どの仕事から始めるかの相談も、AI導入支援からお受けしています。進め方をまとめた資料は資料請求からお送りしています。
よくある質問
ChatGPTの無料版でも仕事に使えますか?
文章の下書きや言い回しの調整など、試すだけなら無料版でも始められます。ただし、使える回数や機能、データの扱いはプランによって違います。社内で広く使う段階になったら、OpenAIの公式の料金ページで法人向けのプランの内容と、データが学習に使われるかどうかを確かめてから選んでください。
ChatGPTとほかの生成AIは、どれを選べばよいですか?
文章の下書きや要約といった基本の使い方なら、どのサービスでも試せます。選ぶときは、ふだん使っているメールや表計算ソフトとつなぎやすいか、法人向けのプランがあるか、入力したデータの扱いが公式に説明されているかを比べます。まず1つに絞って社内ルールを作る方が、混乱が少なく済みます。
社員が個人のアカウントでChatGPTを使っていました。やめさせるべきですか?
まず、どの仕事に使っていて、どんな情報を入れていたかを聞いてください。お客様の個人情報や取引先の情報を入れていた場合は、すぐに止めてもらいます。そのうえで、会社として使うアカウントと入力してよい情報を決めれば、役に立っていた使い方は続けられます。
ChatGPTに書かせた文章を、そのままホームページに載せてもよいですか?
そのまま載せるのは避けた方が安心です。事実と違う内容、大げさな効果の表現、ほかのサイトとよく似た文章が混ざることがあるためです。お店や会社ならではの事実を足し、数字や名前を確かめ、言い切りすぎていないかを読み直してから載せてください。
社内で使い始める前に、研修は必要ですか?
大がかりな研修でなくてもかまいません。社内ルールの紙を配り、入力してはいけない情報の例と、指示文の型を使って実際に1つ下書きを作るところまで、一緒にやってみるだけでも始めやすくなります。使い方の質問を受ける担当者を1人決めておくと、広げやすくなります。






