
この記事でわかること
- 顧客管理をスプレッドシートで始める前に決める3つのこと
- 顧客管理表に入れる列の例と、1人1行で書く理由
- プルダウンや版の履歴など、入力を崩さないための機能
- 顧客情報を共有するときの権限の分け方と個人情報の守り方
- 表のままでは足りなくなり、システムに移す5つの目安
顧客管理は、スプレッドシートで十分に始められます。先に列(項目)を決め、お客様1人を1行に書き、入力のルールと共有の範囲を決めておけば、無料の道具でも名簿と対応の記録を1か所にまとめられます。一方で、お客様が増え、何人もが同時に書き込み、予約や請求とつなげたくなると、表のままでは手間と取り違えが増えます。この記事では、作る手順と列の例、入力を崩さない工夫、個人情報の守り方、システムに移す目安を、業務の仕組みを作る側の目線で順に説明します。
顧客管理をスプレッドシートで始める前に決める3つのこと
いきなり表を作り始めると、列が増え続けたり、人によって書き方が違ったりして、数か月で使われなくなることがよくあります。作り始める前に、何のために使うのか、誰が書くのか、どこまでを1つの表にするのかの3つを決めておきます。

何のために使うのかを1文で書く
「次回の来店時期にお知らせを送りたい」「問い合わせの対応漏れをなくしたい」「担当が休んでも経緯が分かるようにしたい」など、目的を1文で書きます。目的が決まると、要る列と要らない列が分かれます。目的に関係のない情報は、あとから足せばよいので最初は入れません。
誰が書き、誰が見るのかを決める
自分1人で使うのか、スタッフも書き込むのか、見るだけの人がいるのかで、共有の設定と入力のルールの細かさが変わります。書く人が2人以上になるなら、書き方のルールを最初に決めておかないと、同じお客様が別の行に2回登録されるといったことが起きます。
1つの表に入れる範囲を決める
お客様の基本情報と、来店や問い合わせのたびに増える記録は、性質が違います。基本情報は1人につき1行ですが、記録は1人につき何行にも増えます。この2つを同じシートに入れると表が崩れやすいので、シートを分ける前提で考えます。
| 決めること | 例 | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 目的 | 次回来店のお知らせ、対応漏れの防止 | 列が増え続け、入力が面倒になって止まる |
| 書く人と見る人 | 店主とスタッフ2人が書く、税理士は見るだけ | 書き方がそろわず、同じお客様が重複する |
| 表の範囲 | 基本情報と対応の記録はシートを分ける | 1行に記録を詰め込み、探せなくなる |
顧客管理のスプレッドシートに入れる列の例
列は、目的に必要なものだけにします。次の表は、お店や教室、士業の事務所など、小さな事業者でよく使う列の例です。全部を入れる必要はなく、目的に合うものを選んでください。
| 列の名前 | 書く内容 | 決め方の注意 |
|---|---|---|
| 顧客ID | お客様ごとに振る番号 | 同姓同名でも区別できるよう、一度振った番号は使い回さない |
| 氏名とふりがな | 姓と名、読み方 | 並べ替えや検索に使うため、ふりがなも別の列にする |
| 連絡先 | 電話番号、メールアドレス | ハイフンの有無など、書き方を1つに決める |
| きっかけ | 紹介、検索、SNS、チラシなど | 自由に書かせず、選択肢から選ぶ形にする |
| 状態 | 見込み、利用中、休眠など | 選択肢の意味を全員でそろえておく |
| 最終来店日・最終連絡日 | 最後に会った日、連絡した日 | 日付の書式をそろえ、並べ替えられるようにする |
| 連絡してよいか | お知らせの送付に同意しているか | 同意がない人へ案内を送らないための列 |
| 担当者 | 主に対応するスタッフ | 名前の書き方を選択肢でそろえる |
1人1行で書き、記録は別のシートに分ける
基本情報のシートは、お客様1人につき1行にします。来店のたびに「来店1」「来店2」と列を右へ増やしていく作り方は、列が際限なく増え、集計もしにくくなります。来店や問い合わせ、見積もりの記録は「対応記録」のシートに分け、1回の対応を1行で書き、顧客IDで基本情報とつなげます。
入れない方がよい情報
目的に使わない情報は持たないのがいちばん安全です。体調や家庭の事情など、扱いに注意が要る情報を「メモ」の列に何でも書き込む使い方は避けます。カード番号やパスワードのように、漏れると困る情報は表に書きません。
顧客管理のスプレッドシートを作る6つの手順
ここでは Google スプレッドシートを例に、作る順番を説明します。Excel でも考え方は同じです。最初から完成させようとせず、数件のお客様で試してから直すつもりで進めます。
- 1列を紙に書き出す目的に必要な列だけを選ぶ
- 21行目に列名を入れて固定する下へ動かしても列名が見えるようにする
- 3顧客IDを振る同姓同名でも取り違えないようにする
- 4選択肢をプルダウンにするきっかけ、状態、担当者などの書き方をそろえる
- 5対応記録のシートを分ける1回の対応を1行で書き、顧客IDでつなぐ
- 6共有を設定して数件で試す入れにくい列や要らない列を直してから移す
列を決めてから表を作り、選択肢と共有を設定し、少しだけ入れて見直します。いきなり全員分を移さないのがコツです。
- 目的に必要な列を紙に書き出し、多すぎるものを削る
- 新しいスプレッドシートを作り、1行目に列名を入れ、表示のメニューから1行目を固定する
- A列を顧客IDにし、登録した順に番号を振る
- きっかけ、状態、担当者、連絡してよいかの列に、データの入力規則でプルダウンを設定する
- シートを追加して「対応記録」とし、日付、顧客ID、内容、担当者の列を作る
- 書く人と見る人に共有し、数件のお客様で試してから、残りの名簿を移す
紙やバラバラのメモから移すときの注意
紙の顧客カードや、スマホの連絡帳、メールの履歴から移すときは、全部を一度に移そうとしないことです。まず直近に来たお客様や、いま取引のあるお客様から入れ、古い情報はあとから必要な分だけ足します。移している途中で同じお客様が見つかったら、どちらの情報を残すかをその場で決めておきます。
テンプレートは列を減らしてから使う
顧客管理表のテンプレートは、いろいろな業種に合うよう列が多めに作られていることがあります。使うときは、自分の目的に要らない列を先に消してください。空いたままの列が多い表は、入力する人の迷いを増やします。
入力がばらばらにならないためのルールと機能
表が使えなくなる原因で多いのは、入力の揺れです。「紹介」「ご紹介」「友人の紹介」がまざると、きっかけごとの数を数えられません。書き方のルールを決め、スプレッドシートの機能で揺れが起きにくい形にします。
プルダウンで選択肢をそろえる
Google スプレッドシートでは、セルを選んで「データ」の「データの入力規則」からルールを追加すると、プルダウンの選択肢を作れます。リストにない値を入れたときに警告を出す設定もあります(出典: Google ドキュメント エディタ ヘルプ「セル内にプルダウン リストを作成する」)。きっかけ、状態、担当者のように、選択肢が決まっている列はすべてプルダウンにしておくと、あとで数えるときに困りません。
書き方のルールで決めておくこと
- 電話番号はハイフンを入れるか入れないか
- 日付の書き方(年から書く、区切りの記号など)
- 姓と名の間に空白を入れるか
- 会社のお客様は、会社名と担当者名をどの列に書くか
- 新しいお客様を足す前に、同じ人がいないかを検索で確かめる
- 行を消すのではなく、状態の列を「休眠」などに変える
間違えて消したときは版の履歴で戻す
何人もで書いていると、うっかり行を消したり上書きしたりすることがあります。Google スプレッドシートには変更履歴があり、以前の版の中身と、誰が更新したかを見て、その版に戻せます。ただし、以前の版に戻すと、戻す前のセル単位の編集履歴は消えると案内されています(出典: Google ドキュメント エディタ ヘルプ「ファイルの変更内容を確認する」)。大きく直す前には、ファイルのコピーを取っておくと安心です。
並べ替えと絞り込みは表を壊さないやり方で
誰かが並べ替えをしたときに、一部の列だけが動いて、名前と電話番号がずれてしまう事故があります。並べ替えるときは表全体を選ぶか、フィルタを使います。毎月の集計や、次回連絡の対象を抜き出す作業を手で繰り返しているなら、スプレッドシートの自動化で関数や GAS に任せる方法も検討できます。
顧客情報を扱う共有の設定と個人情報の守り方
顧客管理表は、お客様の氏名や連絡先が並ぶ名簿です。便利に共有できる反面、設定を誤ると関係のない人に見られるおそれがあります。小さな事業者でも、名簿を事業に使っていれば個人情報保護法の対象になる点を押さえておきます。

小さな事業者でも個人情報保護法の対象になる
個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人情報データベース等を事業に使っている事業者は、扱う人数の多い少ないにかかわらず個人情報取扱事業者に当たるとされています。また、個人データの漏えいや滅失、毀損を防ぐために、必要で適切な安全管理の措置をとることが求められ、その中身は事業の規模や扱い方などに応じて決めるとされています(出典: 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。顧客管理表を作るのは、この名簿を自分で持つということです。
共有の権限を分ける
Google ドライブの共有では、閲覧者、閲覧者(コメント可)、編集者の権限を選べます。編集者は、初期の設定のままだとファイルをほかの人に共有することもできます。また、「リンクを知っている全員」にすると、リンクを持つ人は Google アカウントにログインしなくてもファイルを開けます(出典: Google ドキュメント エディタ ヘルプ「Google ドライブのファイルを共有する」)。顧客管理表では、リンクでの共有は使わず、相手を1人ずつ指定して共有します。
| 相手 | 権限 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 店主・責任者 | オーナー | 個人のアカウントではなく、事業用のアカウントで作る |
| 入力するスタッフ | 編集者 | ほかの人への共有を止める設定も確かめる |
| 見るだけの人 | 閲覧者 | ダウンロードできることがある点を知っておく |
| 辞めたスタッフ | 共有を外す | 退職の手続きと同じ日に外す |
顧客管理表を守るために確かめること
- 共有が「リンクを知っている全員」になっていない
- 辞めた人や外部の人が共有に残っていない
- スマホや共用のパソコンでログインしたままにしていない
- 事業用のアカウントに2段階認証を設定している
- 印刷やダウンロードしたファイルを置きっぱなしにしていない
スプレッドシートの顧客管理でつまずきやすい点
スプレッドシートの顧客管理は始めやすい分、続けるうちに同じところでつまずきがちです。表を作る側として相談を受けると、道具の機能よりも、運用の決めごとが抜けていることが原因の多くを占めます。
| つまずき | 起きること | 防ぐための手 |
|---|---|---|
| 入力が後回しになる | 最新の情報が表になく、結局メモを探す | その日のうちに書く時間と、書く人を決める |
| 同じお客様が2行ある | 片方だけ更新され、古い連絡先に送ってしまう | 足す前に検索する、顧客IDで管理する |
| 列が増え続ける | 空欄ばかりの列が並び、入力が面倒になる | 列を足すときは目的を確かめ、使わない列は消す |
| ファイルが何個もある | どれが最新か分からない | コピーを配らず、1つのファイルを共有する |
| 作った人しか分からない | その人が休むと誰も直せない | 列の意味と書き方のルールを別のシートに書いておく |
関数やつなぎ込みを増やしすぎない
慣れてくると、関数で集計したり、フォームの回答を自動で取り込んだり、GAS(Google のスプレッドシートなどを動かす仕組み)でメールを送ったりしたくなります。便利な一方で、作った人しか中身が分からない仕組みが増えると、壊れたときに直せなくなります。GAS で何ができるかはGoogle Apps Scriptでできることで、請求書づくりを表から進める方法は請求書の自動化の方法で説明しています。
顧客管理をスプレッドシートからシステムに移す5つの目安
スプレッドシートにはセル数の上限があり、Google スプレッドシートでは1つのファイルで2,000万セルまでとされています(出典: Google ドライブ ヘルプ「Google ドライブに保管可能なファイル」)。小さな事業者の顧客管理で上限に届くことはまれで、移すかどうかは、容量よりも使い勝手と取り違えの増え方で判断します。
- 探すのに時間がかかる行が増え、目当てのお客様と経緯を見つけるまでに手間がかかる
- 同時に書いて事故が起きる上書きや消し忘れ、重複の登録が繰り返し起きる
- 同じ情報を何か所にも書いている予約、請求、メールの送り先に、同じ名前と連絡先を書き写している
- 見せる範囲を分けたい担当者ごと、店舗ごとに見られる行や列を分けたい
- お客様にも入力してもらいたい予約や申し込み、登録内容の変更を、お客様自身にしてほしい
当てはまる項目が増えてきたら、表のまま工夫を重ねるより、仕組みごと見直す時期です。
移す先は3通りある
移す先は、大きく分けて既製の顧客管理サービスを使う、表を残したまま周りに予約や受付の仕組みを足す、自社に合わせた業務アプリを作る、の3通りです。既製のサービスは始めるまでが早く、決まった使い方に合わせられるなら向いています。業務の流れが独特で、既製のサービスに合わせると手作業が残る場合は、作る方が合うこともあります。
| 移す先 | 向いている場合 | 確かめること |
|---|---|---|
| 既製の顧客管理サービス | 業務の流れがサービスの想定に近い | 料金の数え方、表のデータを取り込めるか、やめるときに書き出せるか |
| 表の周りに仕組みを足す | 表で困っているのは予約や受付の入口だけ | 表との二重管理にならないか |
| 業務アプリを作る | 既製のサービスでは手作業が残る、ほかの業務とつなげたい | 最初に作る範囲を絞れるか、作ったあとに直してもらえるか |
予約を受ける入口から整えたい場合は、予約システムを自作する方法と導入サービスの比べ方が参考になります。作ることを考えるなら、Webアプリの開発費用の内訳で、費用が何で決まり、どう小さく始めるかを先に知っておくと、相談のときに話が早く進みます。
移す前に表を整えておく
どの移し先でも、元の表の書き方がそろっていれば移す手間が減ります。顧客IDが振られ、選択肢がそろい、重複が消えている表は、そのまま新しい仕組みに取り込みやすくなります。スプレッドシートの時期に入力のルールを守っておくことが、そのまま次の準備になります。
顧客管理のスプレッドシートを続けるために最初の1か月でやること
最後に、作ってから定着させるまでの動き方をまとめます。表は作った日がいちばん整っていて、使ううちに崩れていくものです。最初の1か月で、書く習慣と見直しの習慣を作ります。

- 目的を1文で書き、列を目的に合うものだけにする
- 数件のお客様で試し、入れにくい列と要らない列を直す
- 書き方のルールと列の意味を、別のシートに書いておく
- 共有の相手と権限を見直し、リンクでの共有を外す
- 週に1回、重複と空欄を確かめ、ルールが守られているかを見る
- 1か月たったら、目的に使えているかを振り返り、列とルールを直す
表で困るのが集計や転記の手間なら、まずはスプレッドシートのまま手作業を減らす方法から試すのが順当です。AI や仕組みづくりで手作業を減らす全体の順番は中小企業のAI業務効率化の始め方で、小さなお店がデジタル化を進める順番は店舗DXの進め方で説明しています。
システムに移す目安に当てはまってきたら、表の列と使い方をそのまま材料にして、どこまでを仕組みにするかを考えます。uparia では、顧客管理や予約、受付など、お店や会社の手作業を減らす小さな業務アプリの開発をお受けしています。いまの顧客管理表を見ながら、作る範囲を一緒に絞り込むところからご相談いただけます。詳しくは予約サイト作成と小規模な業務アプリ開発をご覧ください。
よくある質問
顧客管理はExcelとGoogleスプレッドシートのどちらで作ればよいですか?
自分1人でパソコンだけで使うなら、使い慣れている方で構いません。スタッフと一緒に書く、外出先のスマホで見たいといった場合は、1つのファイルを複数人で同時に開けるGoogleスプレッドシートの方が、最新版がどれか分からなくなる事故を避けやすくなります。
スマホからでも顧客管理のスプレッドシートに入力できますか?
Googleスプレッドシートはスマホのアプリから見たり書き込んだりできます。ただ、列が多い表は小さな画面では入力しにくいので、外出先では見るだけにする、入力はフォームから受けて表にたまるようにする、といった分け方をすると続けやすくなります。
無料の顧客管理アプリと比べて、スプレッドシートの方がよいのはどんな場合ですか?
管理する項目が少なく、自分の業務に合わせて列を自由に変えたい場合や、まず何を管理すべきかを試しながら決めたい場合です。表で運用してみると本当に必要な項目が分かるので、その後にアプリへ移すときにも選びやすくなります。
顧客管理表をUSBメモリやメールで渡しても大丈夫ですか?
お客様の名簿が入ったファイルを持ち出したり送ったりすると、紛失や誤送信で漏れるおそれがあります。必要な人には共有の権限を付けて同じファイルを見てもらい、ファイルそのものを配らない方が安全です。やむを得ず渡すときは、必要な列だけに絞ります。
お客様が何人くらいになったらシステムに移すべきですか?
人数だけで決まる境目はありません。人数が少なくても、何人もが同時に書いて事故が起きる、予約や請求に同じ情報を書き写しているといった状態なら、移すことを考える時期です。反対に、人数が多くても1人で問題なく使えているなら、表のままでも構いません。






